制作担当者が語る!
第143回定期演奏会のズバリ『聴きどころ』!!

公演を終えて

アンコール紹介

今回のアンコールにお届けしたのは、モートン・グールド作曲の「パヴァーヌ」でした。原曲はアメリカン・シンフォネッタ第2番の第2楽章にあたる曲で作曲者自身により管弦楽から吹奏楽へと編曲がなされました。
モートン・グールドも戦後アメリカの吹奏楽のみならず、自身のオーケストラを率いての自作自演やテレビ音楽の作曲など、20世紀のアメリカ作曲家の代表的な人物として知られています。

オープニングにお送りしたコープランドからエンディングをまとめる際、
①作曲家自身の吹奏楽編曲であること
②強烈なメッセージとエネルギーを持ったフサ作品の後、冒頭に耳にした平和なアメリカの風景に戻りクールダウンして頂きたい

との考えで、アンコールに据えさせて頂きました。


アフタートーク

芸術顧問・秋山和慶が送る20世紀のマスターピース集、いかがでしたでしょうか。昨今の吹奏楽作品と比べると地味な部分もありますが、リハーサルを経て、これらの作品がマスターピースと呼ばれる所以が納得でき、聞けば聞くほど深い味わいがある作品の数々でした。

その中でも、「管楽器のためのシンフォニーズ」は秋山氏も初めて取り上げる作品と初日のリハーサルで話され、指揮者として一度は取り上げなくてはいけない作品とのお言葉を頂きました。管楽合奏作品は、Shion楽員のそれぞれの音色がより脚光を浴びる機会になりました。

また、SNSでのお客様のご感想を拝見して、特にフサ作品に一番の注目が集まっておりました。昨今の報道で皆様周知の通りだと思いますが、偶然とも言えるタイミングでのこの曲を取り上げたことは、「音楽」という言葉で皆様に投げかけを行えるきっかけとなったのではないでしょうか。
この様な作品群を取り上げる事もプロフェッショナルな吹奏楽団の使命として行わなければならないと考えております。「吹奏楽のための交響曲作品」の演奏と共に、これからもこのような作品群を取り上げていきます。

次回は9月25日(日)の開催。「第144回定期演奏会」では3度目の悲願、フランコ・チェザリーニ氏をお迎えしての自作自演プログラムです。143回定期とはカラーがグッと変わり、日本初演2曲を含む「吹奏楽の最前線」をお届けいたします。現在入国に向けての手続きも行なっており、着々と準備が進んでおります。
是非、次回もご来場をお待ち申し上げます。

The 20th Century Masterpiece

第143回定期演奏会は芸術顧問 秋山和慶がお送りする、20世紀の吹奏楽マスターピースの数々をお届けします。
今回並んだのは全員がアメリカに関わりのある作曲家です。

アメリカで生を受けた者や、母国からアメリカに移った者。バックボーンはそれぞれですが、
アメリカの地で吹奏楽というジャンルに出会い、そこから生まれた作品群はまさにマスターピースといえる作品ばかりです。

今回も3回に分けて聴きどころをご案内いたします。

そして、改めてお詫びをしなければいけない件がございます。
当初発表したプログラムより、「J.シュワントナー:. . .そしてどこにも山の姿はない. . .」の曲目変更のお知らせをさせていただきました。
上記楽曲にはステージ上で発声を伴う箇所があり、現行の感染症対策の現状を鑑みたところ、
新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、楽曲の変更という苦渋の決断をさせていただきました。

曲目変更に関して残念という声を多くいただきましたが、また、どこかでご披露できる機会があればと思っております。
改めまして曲目変更の件には、ご理解願えれば幸いでございます。


戸外の序曲
アーロン・コープランド 作曲

いかにもコープランドらしい明るく開放的な響きが吹奏楽にマッチする楽曲ですが、元はスクールオーケストラのために書かれた楽曲なのです。聴いていただくと明快なのですが、作曲者自身の編曲ということなので、コンセプトは変わらず、吹奏楽での響きの方がこの曲は水が合っているように思えます。
演奏頻度に関してはオーケストラに比べて、圧倒的に吹奏楽の方が多いのも納得です。管弦楽だけでは実にもったないないのです。

文冒頭に「開放的な響き」と書きましたが、楽曲の頭に出てくるコルネットの長いソロが端的にコープランドらしさを醸し出します。作曲者の他の作品を聞いたことがある方ならば、「なるほど。」と思わせるようなフレーズが随所に現れ、これぞ第二次大戦前のアメリカの風土の様子を思い起こさせる大らかさ、そして雄弁な雰囲気がある楽しい序曲になっています。

意外にもShionの定期では初の選曲になります。


管楽器のためのシンフォニーズ(1947年版)
イーゴリ・ストラヴィンスキー 作曲

1900年代に活躍した大作曲家、ストラヴィンスキーが管楽合奏編成で残した、フランスの作曲家ドビュッシーの追悼のために書かれた楽曲です。一見すると吹奏楽と同じように見えますが、サックス、ユーフォニアム、コントラバス、打楽器が含まれない、一般的なオーケストラの管楽器編成の形で「管楽合奏」と呼ばれる編成になっています。

ストラヴィンスキーは自作曲をたびたび改訂する作曲家として知られ、シンフォニーズも1920年に作曲ののち、1947年に改訂を行なっております
現在では、1947年版が一般的な版となっております。このシンフォニーズですが、追悼のための「儀式音楽」という意味づけで、なんとも言えない無機質な雰囲気が支配します。そこには、同族楽器だからこそ可能な連祷の音楽を現すのです。

初めて聞く方にはとっつきづらい音楽に面食らうかもしれませんが、ストラヴィンスキーが管楽器に求めた音楽をお聞きください。
1975年、第31回定期演奏会(指揮:福村芳一)以来の再演となります。


交響曲 第6番 作品69(バンドのための交響曲)
Symphony No.6, Op.69(Symphony for Band)

アメリカでも早くに吹奏楽というジャンルに着目し、1950-1960年代に多くの吹奏楽曲を残したパーシケッティ。
管楽器の独奏曲も多く作曲しているだけあって、それぞれの管楽器を生かす部分を熟知しています

交響曲のスタイルとしては少々スケールが小さいのですが、各楽章に中身が詰まっており、コンパクトながら音楽的要素が満載。と言ったところでしょうか。
1楽章の主題から4楽章に再現される箇所などは、もはや職人芸です。管楽器だからこその機動性を生かしたアレグロの部分や、パーカッション群がアンサンブルを行う箇所など、聞きどころ・見せどころに釘付けになること間違いありません。Shionでも、先頃亡くなられた主席指揮者であったハインツ・フリーセンと1995年に録音セッションを行ったCDが再販されています。ぜひCDも併せてお聞きください

また、前出のストラヴィンスキーの翌年の第32回(指揮:永野慶作)、1991年の第63回(指揮:ドナルド・ハンスバーガー)の2回、定期演奏会での演奏がありました。


祝典序曲 作品116
Festive Overture, Op.116

全米作曲家協会の会長を長く務め、「リズムの原理」などの音楽書の執筆も多く、指導的立場でアメリカの音楽界を支えたクレストン。
吹奏楽曲もそのリズムと和声が耳に残る曲が多く、一度聞いたら忘れないクセになるような楽曲が多いのが特徴です。

「祝典序曲」という邦題でプログラム記載を行いましたが、クレストンには作品61(Celebration)と作品116(Festive)の2種の祝典という意味で書かれた楽曲があります。日本語で記載するとどちらも祝典という意味となってしまうため、本来ならば「祝典」と「祝祭」と分けるべきであるかもしれませんが、今回は敢えて作品番号での違いで表記をいたしました。演奏頻度は圧倒的に作品61が多く、作品116に関してはほとんど演奏機会が無い作品になっています。初演は1981年ABA(アメリカ吹奏楽指導者協会)の会合上で、アメリカの最高峰吹奏楽団の一つであるアメリカ陸軍軍楽隊によってなされています

この曲は、クレストンの他の作品群を聞いた方なら、さまざまなクレストン節が姿を表すことにニヤリとさせられるでしょう。例えば中間部で出てくるアルトサクソフォンのメロディは「ソナタ」を、エキゾティックなメロディは「前奏曲と踊り」を彷彿とさせるなど、クレストンの吹奏楽作品最後の曲は、まさに今までの作品群の集大成と言えるかもしれません。

録音も残っていないために知る人ぞ知る作品となっており、実演の機会はほとんどないであろう作品116の祝典序曲。
これを聞くだけでも貴重な機会になること間違いなしです。


プラハ 1968年のための音楽
カレル・フサ 作曲

チェコ共和国のプラハに生まれ、のちにアメリカに渡ったカレル・フサ。この曲は、1968年、海を越えたアメリカの地で見た「プラハの春」からの「チェコ事件」に対して、怒りと悲しみと嘆きを持ったフサが抗議の意味を込めた「強いメッセージ性」のある作品です。

楽曲のさまざま場所で聞こえてくる「汝ら、神の戦士」の旋律は、古くはスメタナの「我が祖国」、ドヴォルザークの「フス教徒」にも引用されるフス教徒の賛歌で、チェコでは「抵抗と自由」へのテーマとして受け継がれています。このテーマは一度聴くと耳に残る民族の誇りとも言えるべき旋律です。
「強いメッセージ性」という部分は編成にも現れ、フルート・ピッコロで8パート、トランペットで8パートあり、巨大編成の音圧が曲中を支配する箇所があります。そこでは、嘆き・叫び・怒り、様々な感情が管楽器の咆哮として現れます。作曲に至る経緯も然り、そしてその完成を見たこの曲は、まさに20世紀の吹奏楽作品の中でも遺さなければならない、マスターピースというべき作品の一つであります。

2001年の第82回定期で初めて取り上げたこの楽曲。偶然にもこの時がShion定期演奏会での初登壇となった秋山氏でありました。
20年以上ぶりの再演に際し、このプログラムが決まった際には、世界の情勢がこの様になっているとはだれもが想像もつきませんでした。
今なお続くこの悲劇が早期に終結することを願ってやみません。


「20世紀を彩る作曲家たちのマスターピース」をテーマにShionがセレクトした厳選の作品群を秋山和慶がどのように創り上げるか。
スペシャルなプログラムは6月26日(日)、ザ・シンフォニーホールにてお聞きください。ご来場お待ち申し上げます。

公演の詳細はこちら>>> 第143回定期演奏会 コンサートページ
チケットのご購入はこちら>>> Shionオンラインチケット